第12章 ♥家”性”夫は見た?
『えっとぉ~、あ、ちゃくりゃいしゃんね? 今開けるから、ちょっと待っててぇ?』
項垂れる俺の前で、電動式の門が開いた。
『どぉぞぉ~、入ってきてぇ~』
「は、はい…。お、お邪魔いたしまちゅ…」
俺はスピーカーに向かって恭しく頭を下げた。
門をくぐると、玄関へと続く十段はあろうかと思われる階段を上った。
漸く見えてきた玄関ドアには、これまたセレブの象徴とも言うべきライオンの顔を模したドアノッカー。
実物を見るのは初めてだ。
ずっしりとした重みを手に感じながら、俺はノッカーを打ち鳴らした。
「はいはぁ~い、もぉ、そんなにならさなくても聞こえるからぁ~」
ドアが開くと同時に飛び出してきた小動物…いや、可愛い生き物。
金髪の巻き毛をフワフワさせ、ボリューミーなミニスカートをヒラヒラさせた…奥方?
「あ、あの、わたくち、こう言った者で…」
そう言って差し出したのは…
「う~ん、それはちょっと必要ないかもぉ…。だってウチお金持ちだからぁ~」
キャッシュカードだった。
「あ、こ、これは失礼をば…」
俺はキャッシュカードを財布に仕舞い、代わりに名刺を差し出した。
「さくらいしょう?」
「はい、そようで…」
「なぁんだ、ちゃくりゃいしゃんじゃなじゃん」
奥方はフニャンと笑うと、俺の手を引いて、お屋敷の中に引き込んだ。