第12章 ♥家”性”夫は見た?
朝の木漏れ日の中、愛車のママチャリを走らせる。
なんて気持ちのいい朝なんだ。
自然と鼻歌なんかも口ずさんでしまう。
”清々しい”とはまさにこのことだ。
自宅からママチャリを走らせること30分。
依頼主の家に到着。
ガレージのシャッター前にママチャリを停め、二重に施錠する。
盗難被害の防止のためだ。
それにしても立派な邸宅だ。
レンガ造りの、まるで異国の城を思わせるような建物。
これは仕事のし甲斐がありそうだ。
ガレージから歩くこと数メートル。
漸くゴールドに輝くプレートが見えてきた。
恐らくこれが表札だな?
ぷれーとにはローマ字で『Matsumoto』と彫られていた。
予め準備しておいたメモと表札の名前を照らし合わせ、間違いがないことを確認する。
うん、この家で間違いないようだ。
俺はプレートの下のインターホンを押した。
おっと、これはカメラ付きだな?
第一印象が肝心だ。
俺は姿勢を正した。
『はぁ~い、どなたぁ?』
スピーカーから返ってきたのは、右肩上がりの可愛い声。
「あ、あの、わ、わたくち、か、か、家政婦協会からきました、ちゃ、ちゃくりゃいでしゅ」
あぁ~、なんてことだ…
あれほどイメトレしたのに見事な大失態意だ。