第9章 ♦️24時間営業中
雅紀side
昼間普通にサラリーマンをして、ちょっとだけ仮眠の後のバイトは、体力に自信のある俺でも、正直すっごく疲れる。
でもさ、そんな疲れも吹っ飛ぶぐらいの面白さが、コンビニにはある。
例えば今立ち読みしてるあのおじさん。
見るからに”団塊の世代です”って顔しちゃってるけど、読んでる雑誌「薔薇族」だからね?
えっ、「薔薇族」知らない?
今度ネットで調べてみなよ、凄いからさ。
実は俺もそんな雑誌があること知らなくって、櫻井さんに色々と教わったんだけどね。
「ちょっと相葉君、あのおじさん気を付けた方がいいかもしれないね」
「えっ、どうしてですか?」
「わからないのかい、君は? あのおじさん、君を狙ってるんだよ?」
えぇっ、まさか?
いや、でも確かに最近頻繁に見かけるような気が…
「大体おかしいと思わないかい、この時間に背広姿なんて、ありえないでしょ?」
櫻井さんの言うことは尤もだけど、でもまさか、ねぇ?
あ、おじさんが「薔薇族」片手にこっち(レジ)に向かって歩いて来る。
「いらっしゃいませ」
あぁ、もぉ、表紙からして怪しいって、この雑誌。
「700円です」
俺は営業用の笑顔を浮かべた。
「ふふふ…、君…、可愛い顔してるねぇ…」
「へっ? や、あの、ちょっと…困りますって…」
俺の手はおじさんにガッチリホールドされた。