第8章 力と代償
兄の話によると、遠征に行ったときに華さんが奇襲を受けて敵勢力に捕まってしまったのが始まりだったらしい
隊員で救出に向かい、そのまま敵勢力のトリガーを奪うために戦い勝利したのは有名な話だ
しかし、華さんは既に戦えるような力は残っていなかったらしい
逃げられないように、と両足を斬られ清潔とは言い難い包帯でその足を治療され牢屋に閉じ込められていたそうだ
兄が救いに行った時には、トリオンも残りわずかで一人で激痛に耐えていたという
敵勢力の増援が迫る中、兄は味方がどんどん敵勢力を倒していくと確信していたが、現実はそう甘くない
どんどん緊急脱出で船へと戻る仲間達を見て、彼女は愛する男を守る決断をした
―どうせ地球へ戻っても、私はこの足じゃ長くは生きられない
―それならばいっそ、貴方の元に永遠にいたい
兄はそれを渋ったが、彼女は彼に自分の魂の結晶としてブラックトリガー『茨姫』を託した
彼女らしい、美しいトリガーだ
大学で歴史を勉強していたからかは分からないが、歴史上で有名な武器や神話の道具…様々な用途に応じたトリオンで作られた武器が兄を助けた
それはまるで、どんな事があっても兄を守れる力になる為にできた力のように感じた
それで兄は、その遠征から無事に帰ってきたのだ
現在茨姫を使えるのは、兄と同じ血の流れている私だけ
兄も今はこの世にいない
彼は第一次大規模侵攻で彼女の元へと逝ったのだ
ボーダーとしても、大きな戦力が失われた
そして残された2つの黒トリガーの使い手が見つからない事も含め、悔やまれているところに私がボーダーに入ったのだ
私も、兄の黒トリガーを使うためを入隊理由の1つとしていたので都合が良かった。
他の人には決して使えないトリガー、茨姫
兄を守れなかった、このトリガーで私は市民を守っているのだ