第6章 真昼の夜
プスプスと機械特有の煙をあげながら倒れる新型のお腹を遼と二人でこじ開けようとスコーピオンを動かす
「嵐山隊が先に新型倒しちゃったらしいですよ。三人が慎重すぎるから…一対一ならともかくこの人数で負ける訳ないのに」
「別に競争してるわけじゃない」
「そーですけどー…」
「まぁあれだよね、嵐山さん達に負けたのは悔しいよ…ねっと、遼開いたよ」
ガキンッとお腹の部品を壊すと、遼が中に手を突っ込む
遼が取り出したのはクリーム色のトリオンキューブだった
「腹の中に諏訪さんはいません、あるのはこのキューブだけです」
「なるほど…琥珀」
「はい、色は諏訪さんのものです。死人の色でもトリオン兵の色でもないです」
そう私の目から見た情報を風間さんが呑み込み、少し考える
「新型の腹の中がゲートにでもなっていない限り、こいつの中には諏訪が丸ごと圧縮されているとみるのが妥当だな…堤と笹森を呼べ、本部のエンジニアに解析させろ」
「戻ればいいですけどね…」
「不吉なこと言わないでよ!」
確かに死んではいないが、戻るとの確証もない
ここは本部のエンジニア達の技術力に賭けるしかないだろう
スッと新型の横に座っていた体勢から立ち上がり、先程まで爆発したような音がしていた本部の方を見る
「そういえばさっき本部の方爆発音してましたけど、大丈夫ですかね?」
「問題ない、本部には太刀川や当真がゴロゴロしている。いざとなれば忍田本部長もいる、それになにより…本当に危険なときには奴が動くはずだ」
「あー…趣味が暗躍とかいう恥ずかしい奴ですね」
「本当お前って迅さんに厳しいよな…」
「そんな事ないよ、ほら笹森と堤さん呼んでから次行こ」
セクハラしてくる迅さんを冷たくあしらう癖ができた事を自覚し、笹森達が向かった方向を眺める
住宅地というのもあり、視界が狭い事から私のサイドエフェクトを最大限に活用できないこの場所では笹森達の姿は見えなかった
…二人がこのキューブを見たら、どう思うんだろうか
両手でかかえた諏訪さん(キューブ)を見つめ、元気な諏訪さんが戻ってくる事を願った