• テキストサイズ

Pentagon【気象系BL】

第4章 G線上のアリア


きっと大野さんが受けた心の傷は、きっとこんなもんじゃない。

その証拠に見開いた瞳には、今にも零れ落ちそうな滴が溜まっていた、

「…なんなんだよ、お前…」

酷く冷えた声。

両の手に再び込められた力。

「“報酬”だって…“金が欲しくて身体売ったんだ“、って…。自分の中でそうやってケリ付けてんのに…。なんだよ…」

大野さんは俺を押し退けるようにして立ち上がると、俺の目の前でセーターを脱ぎ捨てた。

露になった肌に、無数に散らばる赤く鬱血した痣と、手首に痛々しく残る拘束の跡。

俺は思わず目を背けた。

「見ろ…よ…ちゃ…んと…」

跪き、俺の手を取ると、痣の一つ一つを指先に確かめさせるように触れさせた。

「これも…これ…も、みんな…」

だんだん乱れていく呼吸に合わせて上下する肩。

触れた肌に感じる、通常よりも高めの体温。

止められない涙が頬を伝い、俺の手に落ちた。

「しょ…く…ん…、助け…て…」

すがる声は酷く掠れていた。
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp