第16章 永遠に君想う…
『起きて? そんなとこで寝てたら風邪ひくよ?』
智に肩を叩かれたような気がして、俺はテーブルに伏せた顔を上げた。
「寒っ…」
さっきまで付いていた筈のヒーターは、いつの間にか消えている。
「俺、タイマーなんてしたっけ…」
さては智の仕業だな?
どうせまた「電気代が…」とか言うんだろうな…
「でも、こう寒くちゃ身体に堪えるし…いいよな?」
今日くらいはいいだろ?
それにこの家のローンだって終わってんだぜ?
定年までガッツリ働いた分の退職金、全部注ぎ込んだんだから、大目に見ろよな。
な、智…?
いいって言ってくれよ…
さっきはちゃんと起こしてくれたじゃないか…
なのにどうして何も答えてくれないんだよ…
なあ、智…、答えてくれよ…
堰を切ったように溢れ出した涙は、頬を伝い、顎を伝って、テーブルの上にポタポタと落ちた。
医者から余命を継げられた時、こんな日が来ることは分かっていた。
俺なりに覚悟だってしていた筈なのに…
いつまでも一緒にいることは出来ないって、分かってた筈なのに…
智のいない生活を想像してみたことだってあった。
想像の中の俺は、智がいなくたって、しゃんと胸を張って前を見ていた。
でもそれがどうだ…
いざその時を迎えた途端これだ。
情けない男だって思うか?
智が隣にいないだけで、こんなにも寂しいなんてな…
空っぽだよ…
お前を失くした俺は…
ただの抜け殻だ…