第15章 二人の記念日
翔side
このところ智君の帰りが遅い。
いつもなら、俺より早く帰宅して、俺の帰りを出迎えてくれるのに…。
ここ数日は、俺の方が早く帰宅して、智君の帰りを出迎えている。
バイトだ、ってことは理解してる。
智君だって立派な大人だ、ってことも…
それでもちょっとしたことに不安になったり、心配になったりするのは、やっぱり俺が智君に心の底から惚れてる、ってことで…
まあ、ニノに言わせれは、甘やかし過ぎだ、ってことらしいけど…
それにしても遅い…
時刻はもう8時を回っている。
智君のバイトが終わるのは、6時頃。
遅くても7時には帰って来る筈。
電話にも出ないし、これはもう何かあったに違いない。
俺はコートのポケットに、スマホと財布だけを捩じ込み、部屋を出た。
下から上がって来るエレベーターを待つのすら、もどかしくて、自然と苛立ちが湧いてくる。
階段の方が早いんじゃないか…?
エレベーターを諦め、階段に足を向けたところで、タイミング良くチンと音が鳴って、エレベーターが止まった。
扉が開き、乗り込もうとした瞬間、俯いた顔を上げた智君と目が合った。
「あれ、翔君…。出かけるの?」
呑気な声がエレベーターホールに響いた。