第12章 愛の夢
「和、は…、今、幸せ…?」
和の目が驚いたように俺を見た。
けど、すぐに破顔して…、
「幸せに決まってんじゃん。だからさ、大野さんも幸せになって?」
和の腕が伸びて、俺の首に回った。
そのままグッと引き寄せられて、俺の身体は和の腕の中にすっぽり包まれた。
なってもいいの?
俺、幸せになってもいいの?
でも、幸せって何?
愛し、愛されることだけが幸せなの?
きっと違うよね?
「自分の気持ちに素直になりなよ。本当は会いたいんでしょ?」
和が喋るたびに、俺の髪に吐息がかかる。
それが擽ったくて…
「な~に笑ってんのよ? …って、泣くか笑うかどっちかにして貰えません?」
背中に回された和の手が、まるで子供をあやすように俺の背中を摩った。
和の手が背中を上下する度、俺の氷のように冷え切った心を少しずつ溶かしていくような気がした。
「あったかい…ね、和の手…」
「そう? でもさ、翔ちゃんの腕はもっとあったかいよ?」
俺は和の胸で小さく頷いた。
「…翔ちゃんさ、今下に来てんの。 会ってみる?」
その言葉に俺は和を見上げた。
その瞬間、和の唇が俺の額にそっと触れた。
「勇気が出るおまじない。まーくんには内緒ね?」
和が人差し指を唇に当て、ウィンクを一つした。
そして、
「もう一度聞くよ? どうする? 会ってみる?」
俺はその言葉に「会いたい」と小さく答えた。