第9章 子守唄
食事の間も、和は終始気まずそうに俯いていたけど、相葉ちゃんはそれ程気にも留めていない様子で…。
内心そんな相葉ちゃんを羨ましくも思う。
相葉ちゃんみたいに開き直ることが俺にもできたら、こんなに苦しまなくても良かったんじゃないか、って。
でもきっと、相葉ちゃんには相葉ちゃんなりの悩みだってあるんだろうね、表に出さないだけで。
あの時、俺を抱きながら流した相葉ちゃんの涙を、俺は知ってるから。
夕食の片付けが済むと、いつの間にか泊まることになっていて、俺たちは3人で風呂に入ることになった。
抵抗が全くなかったと言えば嘘になる。
あんな場面を目にしてしまった直後だし、何よりも相葉ちゃんに抱かれた時の恐怖が蘇ってくるんではないか、そう思うと少しだけ怖かった。
でも、流石におばちゃんと一緒にお風呂に入る趣味は…俺にはない。
多少の窮屈さを感じながらも風呂を済ませ、リビングに戻ると隣の和室に布団が三組敷かれていた。
「大野さん真ん中ね」
言われるまま俺は和と相葉ちゃんに挟まれる格好で布団に潜り込んだ。
布団に横になった途端、和の手が俺の手を握った。
俺が安心して眠れるように、和がいつもしてくれていることだ。
相葉ちゃんにはちょっと申し訳ない気もしたけど、今の俺には和の手が安定剤みたいな物なんだ。
「お休み、大野さん?」
「お休み、大ちゃん」
「和、相葉ちゃ…、お休…み…」
目を閉じると、外出の疲れからか、直ぐに睡魔が襲ってきた。
その夜俺は久し振りにぐっすり眠れたような気がした。
「子守唄」完