第8章 椿姫
雅紀side
大ちゃんとの一件以来、俺と和の関係にも変化があった。
とは言っても、和を好きな気持ちに変わりはないし、今までの関係を変える気は、俺にはさらさらない。
寧ろ、変わったのは和の方かもしれない。
和が大ちゃんとどんな話をしたのか、俺は何も知らないし、敢えて聞く気もない。
でも、あの時から和の中で何かしらの変化があったのは、紛れもない事実。
もしかしたら、和と大ちゃんの間に、俺に言えないような関係が出来ていたとしたら…
俺の心の中に疑念だけが募った。
和が大ちゃんに恋心に近い、憧れの感情を持っていたことを、俺は知っていたから。
それは今でもきっと変っていない。
その現実から目を背けていられたのは、和が無条件に俺を受け入れてくれていたから。
潤との関係を知りながら、それでも両手を広げて俺を迎え入れてくれたから。
だからこそ、この状況がもどかしくて仕方がなかった。
溝がこれ以上深くなる前に、和とちゃんと向き合わなきゃ…
逸る気持ちだけが空回り、黒い感情だけが胸に溢れた。
そんな時だった、一本の電話が鳴った。
母ちゃんからの電話。
親父が倒れた…と。