第18章 ポスト
封筒から便箋を取り出して飛行機を折った。
飛行機なんて久しぶりに作る。
確かよく飛ぶ折り方があったはずだと当時の記憶を手繰り寄せた。
「日向君、何してるの?」
「飛行機折ってる」
「見れば分かるわ!それ伊月君が書いた手紙でしょーがっ。何やってんだっ!」
怒鳴るリコを無視して、作った紙飛行機を空目掛けて飛ばした。
俺の記憶力もまだ衰えてないらしい。
飛行機は空高く飛んでいった。
「こうすれば二人に届くかと思って」
ぎゃあぎゃあ煩かったリコが黙った。
一緒に飛んでいく紙飛行機を見つめる。
その目はまた潤んでいるようだ。
無理もない。大事な友人を二人も失ったんだ。
「伊月君、苗字ちゃんに会いたがってたもんね。ちゃんと会えたかな?」
「会えただろ。16年も待ったんだからな。伊月も、苗字も」
地上から見上げた空に、手を繋いで笑い合う二人が見えた気がしてじっと眺めた。
紙飛行機が向かう先が眩しくて目を細める。
届けばいいと思った、16年分の想いが。
そして空の向こうで幸せになってほしいと思った。
二人の友人に、心から。
【終】