第1章 同窓会
高校を卒業してから十数年経った今でも、誠凛高校バスケ部のメンバーとは交流がある。
成人して社会に出て、酒の味を覚えた俺達はたまに集まって飲みに行っては昔話に花を咲かせる。
「ちょっとー、日向君遅いわよぉー!」
「遅いから先に始めちゃったよ」
「悪い、仕事が長引いてよ」
「もう一回乾杯しよう、もう一回!」
今日は少し遅い参加になってしまったが、どんなに遅くなっても今日だけは来たかった。
きっと皆も同じ思いなのだろう。
いつもより集まりがいい。
懐かしい顔が勢揃いだ。
俺達ももう三十路を越えた。
年をとればとるほど集まりが悪くなっていく中で、この時期だけは逃せない。
それが暗黙のルールとなっている辺り、皆お人好しなのは変わっていないらしい。
「あーぁ、伊月もいたらよかったのになぁ」
小金井が残念そうに言う。
皆も苦笑を隠せず、とても残念そうだ。
伊月、お前好かれてんな。
「伊月君はちゃんと会えたのかしら。苗字ちゃんに」
「会えたって信じてるよ、俺は」
会えたに決まってる。
伊月と苗字は二人でいる方がいい。
とてもお似合いの二人だった。
鞄の中にある数冊のノートと一通の手紙を横目で見た。
それを見ただけではっきりと二人の姿を思い出せた。