第3章 3
ベンチに座る健人は俯いていて表情は見えない
「健人、何が気に喰わないんだ?キーが高過ぎたか?それとも振りが複雑すぎたか?」
マネージャーが健人の前に立って話している
その表情は困り果てていた
「そんなんじゃないよ。」
健人が発する言葉。
それは泣きそうな弱々しい声で
「じゃあ、なんだ?なんで歌わない?」
マネージャーが必死に健人に問いかける
「次あの歌を歌うと大切な人を失っちゃうんだ」
健人のこの言葉で確信に変わった
あの日健人は風磨とあたしの会話を聞いていたんだ。
マネージャーは意味がわからないと言う顔をしていて
健人は未だに俯いたまま。
タイミング良くマネージャーの携帯がなり
マネージャーは携帯画面を見て
「よく考えろよ」
と健人に言って去っていく。
マネージャーと入れ替わりに健人に近づく
「健人」
声を掛けると気まずそうな顔をした健人。