第29章 永遠
背中に右手を回した翔さんは、
俺を抱き寄せ、胸にキスをした。
チクりとしたその痛みが、
そこに咲いた朱い花を安易に想像させる。
.......一瞬。
俺から身体を離した彼が、
静かに、
ゆっくりと、
触れるだけのキスをした。
......
恐る恐る閉じていた目蓋を押し上げると、
優しく微笑む王子と目があった。
櫻「カズ...」
名前を呼ばれて、不覚にも鼻の奥が、ツンとした。
......
なんだ、これ?
ホントに目覚めた眠り姫じゃねーんだから!
.........
彼に名前を呼ばれることが、こんなに嬉しいなんて。
...俺は、思わず翔さんの首にしがみついた。
「翔。ギュッて、して。」
彼は笑って、強く、きつく、
苦しいくらいに抱き締めてくれた。
櫻「愛してるよ。」
耳元でそう囁かれて、ヤバい...ホントに涙が。
恥ずかしさで、横を向こうとした俺の顔を、両手で挟んで、キラキラした目で見つめてくる翔さん。
「愛してる。」
そう言って、両腕を彼の首に絡めると、
綺麗な目で俺を見ながら、
櫻「泣き虫♪」
と笑った。
........そして、
櫻「ふざけすぎた..、ごめん...。」
と言いながら再び唇を落とした。