第28章 船出
〔櫻井side〕
震える二ノを胸の中に引き寄せ、
強く強く抱き締めた。
「マンション、見に行こう。
会社にも、話すよ。...カズと一緒に生
きてくために、俺...何だってする..
それから....」
二「翔.....」
二ノは、俺の腕の中で顔を上げて、
涙で潤んだ瞳を俺に向けた。
二「何もなくてもいいんだ....翔...
そのままで、今のまんまの、
貴方がいてくれたら....
俺は、もう何もいらないよ...」
「カズ....」
二ノのその言葉に、涙が浮かんだ...
...こんなにも、大切だと、
一生を掛けてもいいと思える人に
出会えたことは、まさに、奇跡...
...........
慣れないダンスのレッスン....
上手くできなくて、一緒に何度も
同じところを踊ってた....
汗だくで笑い合ってたあの頃....
急に思い出して、不思議だった。
「....あの頃の俺たちに、
今のふたりのこと話して聞かせたら、
....どーするだろうね..?
少年だった俺たちに....」
突然そういう俺に、二ノはちょっと笑って、
二「俺は、『そーかなって思った♪』って
言うよ....きっと。」
「....マジで?」
二「...翔は、『うそだろー!!っざけんなよ』
って、言うよ....絶対..笑」
ちょっとマネして言う二ノに、
笑ってしまった。