第25章 雪解
彼の唇は、そっと擦るように、
ほんの少し動いただけで、
直ぐに離れる。
激しく絡み合うキスは、
欲情をむき出しにして求め合うけど、
触れるだけの渇いたキスは、
気持ちの繋がりを感じて、
心が温かくなる。
櫻「....カズ....」
「......ん?」
櫻「カズ.....」
「........」
何度も俺の名前を呼ぶ彼の目は、
ドキドキするほど綺麗で....
俺は、思わず、
「俺だけ、見て....」
と甘えた声で呟いてしまう....
これじゃあ、嫉妬深い女子高生だ....
自分で呆れる。
でも、翔さんはそんな俺の額に、
自分の額をくっつけて、
櫻「ずっと、ずっと、カズしか見ない....
約束する....」
息がかかる距離でそう言った。
黒くて大きなその瞳に
吸い込まれるように....
俺から、そっと口づけた....
.........
こんなに幸せでいいのかって....
思う。
そのことに気づかせてくれた、
俺にとっての、彼の存在の大切さを、
改めて感じさせてくれた......
ならば、
悲しかった夜も、涙も、
俺にとっては、必要だった.....
今、
そう、
思う.....