第24章 十戒
〔櫻井side〕
二ノの目から次から次へと、
涙が溢れて頬を伝わる。
それを、拭ってやることも出来ない俺...
震える肩を抱き締めてやりたいと...
伸ばそうとした手を、
ぐっと力を入れて、堪える。
.....今の、俺には、その資格がない。
でも、
だけど...
『それで自分が楽になりたかった』
二ノは、そう言った。
なんと思われてもいい....
伝えたいことが、
伝えておかなければならないことが、
.........
...そうだ。
俺は、静かに....
でも、はっきりと言った。
「カズに、もう俺とは無理だと、
そう言われても、仕方ない....
それでも、俺は....この先、
カズ以外の人を、
好きになることは、ない....
資格がないのは承知で言うよ...
....カズ、愛してるよ。」
目を伏せて聞いていた二ノが、
顔を上げて真っ直ぐな目で俺を見た。
何か言いたそうに、口を開きかけ、
それをキュッと強く結んだ。
そこに、彼の強い意志を感じた。
二「...今夜は、帰るよ...」
そう静かに、言った二ノ....
その表情は、さっきと違って、
穏やかに見えた。そんな二ノに、
「...わかった...」
俺も、二ノの目を見たまま、静かに答えた。