第24章 十戒
〔櫻井side〕
『翔ちゃんは忘れて』
大野さんは、そう言った。
『二ノに言わなくていい』
大野さんを抱いた夜.....
眠れないベッドで、考えていたのは、
二ノのこと....
今回のロケ前、
大野さんとふたりで、ということに、
不安な顔をしていた。
そして、
二ノの不安通りに、なった。
大野さんに言われなくても、
二ノには、話さないでいようと思った。
何でも正直に話すことが
誠意とも言えないと...
大野さんの気持ちに応えたこと。
...それは後悔していない。
精一杯の気持ちでぶつかって来てくれた彼を、俺は、今度は、突き放さなかった。
苦しんでいた大野さん....
その気持ちに、
ちゃんと向き合いたかった。
あれが、正解だったのか....
それは、分からない。
でも、あの夜を、否定するつもりも...
ましてや、忘れるつもりも、ない。
あの時、あの瞬間、
大野さんを欲しいと...
...そう思っていたのは、嘘偽りない、
俺の本心...
二ノのことは、
これからも変わらず、大切にしていきたい。
ずっと、変わらない....
大野さんとの事を知れば、
二ノは、悲しむだろう...
大切な人を、わざわざ悲しませる必要も、
苦しませる必要も、ないと思う。
俺が、ひとりで、背負っていけば、
それで、いいんだ....
.....このときは、
そう思っていた。