第18章 信愛
〔二宮side〕
不意に腕の中に抱きすくめられ、
俺は戸惑った。
「しょう...さん?」
翔さんは何も言わず、
俺の背中の腕にさっきより力を込める。
何も言わない俺に、翔さんは絞り出すように
耳元で言った。
櫻「カズ...ただいま....」
「...えっ!?」
訳が分からず...でも、もしかして....
いや、そんなはず無い...
俺の頭の中は、この時点ですでにパニック。
そんな俺に、翔さんは言った。
櫻「思い出したんだ。カズのこと、全部。」
「翔!!!」
俺は翔さんの顔を上目遣いに見た。
翔さんは俺に優しい眼差しを落としながら、
もう一度言った。
櫻「カズ、ただいま♡」
翔さんの唇があんまり近くにあって、
俺たちはそのまま近づいていった。
でも、この時、誰かが駐車場に来たのが
分かり、俺たちは慌てて離れた。
残念がる翔さんの手をぎゅっと握り、
翔さんの目を見て
「おかえり。」とそう言った
笑った翔さんの顔は、
直ぐに涙で見えなくなった。
帰りの車の中で、
俺とのことを思い出したきっかけとか、
どんなだったか、翔さんは話してくれた。
俺は涙でグチャグチャな顔で、
翔さんの話に『うん、うん』と相槌を打った。
そして、俺の同意の元、
車は翔さんのマンションの駐車場に
滑り込んだ。