第17章 忘却
俺たちを、翔さんが
とびきっりの笑顔で迎える。
その笑顔に、俺は、
『覚悟を決めなきゃ...』と、
奥歯を噛み締めた。
櫻「一応退院祝?みんなにも
心配かけちゃったし、
出前取ったから食おーぜ!!」
リビングのテーブルには
高級そうな寿司が並んでいた。
(この雰囲気で、いつ切り出せるかな...)
俺以外の3人は、顔を見合わせた。
俺は、わざと明るく、
「すげー!!うまそう!!やった...
俺、寿司食べたかったんだよね~」
櫻「食べてよ、食べてよ~!」
俺ら5人は、それでも、和気あいあいと、
テーブルを囲み、缶ビールも開けた。
しばらくは、仕事のことなんかを、
何となく話して、その場を凌いでいた。
その合間にも、俺は翔さんの顔を
何度も見ていた。
変わらない笑顔、
鼻を触るクセ、
メンバーを見る優しい眼差し...
そのどれもが、変わってなくて、
本当に俺とのことを忘れているのか....
冗談だったんじゃないかって...
でも、俺の視線に気付いて
笑い返してくれるその顔は、やっぱり、
俺だけの翔さんではなかった。
そこにいきなりの本題をぶち込んだのは、
翔さん本人だった。