第16章 擦違

俺は言葉を選びながら、
ニノの目を見て話を続けた。

「あの日、珍しく大野さんは
すごい酔って...
俺が家まで送って行ったんだ。
そこで....大野さんに..

『好きだ』と言われて...」


二「大野さんが!？」

「うん...俺も驚いて...」

二「それで、どうしたの？」

「直ぐマンションを飛び出してしまって..」

二「大野さんは、いつから？」

「..俺とカズがこうなる前から..だって..」

二「そんなこと....
そんな素振りは一度も...」

ニノがそう言おうとして途中で止めたのは、
それが、自分のせいだと気がついたから...

俺はそのことには触れずに先を続けた。

「大野さんの家から逃げるように
飛び出したけど...」

（キスのことは、言わなくても..
いいよね....）

「大野さんは大事な仲間だし、
そのまま聞かなかったことにするわけにも、
いかない..って思って。」

二「じゃ...どうして、
そう言ってくれなかったの？？」

必死なニノの目に応えるように、
俺はゆっくりニノの髪を撫でた。

「カズだって、自分がやっと告った相手が、
彼女（この場合『彼』だが...）に、
いちいち報告してたら、やでしょ？？」

二「翔....」

「大野さんの気持ちには応えられないけど、
俺を好きだと言ってくれたことには、
ちゃんと向き合わなきゃ...って、
そう思ったんだ...」

二「.....」

「嘘をついて、ごめんね...」

ニノは黙って俯き、首を何度も振った。