第15章 秘密
俺は大野さんを抱えて玄関を入った。
仄かに漂う、独特の油絵の具の匂いに、
(ああ~この感じ...♪智くんちだぁ..)
何だか懐かしかった。
俺たちがこんなに忙しくなる前は、
よくここに来ていた。
そしていつも、智くんの才能に
舌を巻いていたんだ。
絵は苦手な俺にとって、
智くんの描く油絵やイラスト、
そして立体的なフィギュアは、もう、
それだけで驚愕に価することだった。
「このまま趣味にしとくの勿体ないよ!!!」
と、事務所に掛け合って、
個展を開かせたのも俺だった。
いつもは、ぼんやりして居る彼の、
非凡な才能が羨ましくもあり、
尊敬もしていた。
(まあ、今俺にもたれて、
上機嫌な彼からは、
正直そんなの感じないけどね...)
「大野さん、着いたよ~...」
大「...しょおちゃん...水~」
全く世話が焼けるよ...
俺は笑いながら冷蔵庫から
ペットボトルを出してきた。
「ハイ、どーぞ...つーか、大丈夫~?」
大「...ごめんね..なんかね..」
(ダメだな..こりゃ...)