第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「ご安心なされませ。国会議員にならずとも、バク様にはもっと有効的な手段があります故」
「! な、なんだそれはっ!?」
人差し指を立てるウォンに、バクが食らい付く。
予想以上のその反応に、ウォンは微笑ましく笑った。
「バク様が母上様の後を継ぎ、このアジア支部の支部長になればよいのです」
「し…ぶ、ちょう?」
「ええ」
「なんで、おれがしぶちょうになれば…?」
(貴方様がチャン家であることを自覚すれば、すぐに気付きますでしょう。ミア殿とは本当の家族でないことを)
そう本音の答えは仕舞い込んで、ぽふりとバクの癖の残る金髪頭を優しく撫でる。
「バク様が支部長の地位を身に付ければ、守りたい人も守れるようになります。その人の笑顔も、きっと守れることでしょう」
「…ほんと、か?」
「ええ」
それもまた、確かなウォンの本音だった。
だから純粋な願いを込めたバクの心にも響いたのか。
透き通る目が、意志を抱える色へと変わる。
「…わかった!おれ、しぶちょうになる!」
「左様で御座いますか!バク様ならさぞ立派なアジア支部長になられることでしょう…!」
「かあさまみたいになれるかわからないけど、やってみる」
「ええ。このウォンも応援してますぞ」
「ぜったいだぞっ」
「勿論ですとも」
「あ!きょうのことは、ふたりのひみつだからなッ」
「ええ、ええ。勿論です」
「やくそくだッ」
「はい」
差し出された小さな小指に、大きな小指が絡まる。
にっと無邪気に笑うその少年が、やがてはアジア支部の皆の命を背負う支部長となる。
その些細なきっかけは、ここからだった。
「って、あたしに思いっきり話してんじゃねーか。二人の秘密じゃなかったのか?」
「ほっほっほ。貴女は守り神ですからね。ある意味では、人ではないでしょう」
「…そりゃ都合の良い考えで…」