第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
「なぜかぞくは、ケッコンができないんだッ?」
「(ケッコン?)…結婚、ですか?」
如何なる質問にも受け応える気ではいたが、向けられた問いはウォンの予想を遥かに越えていた。
何故そんなことを、とも思ったが、拳を握り見上げてくるバクの真剣さに気圧されてしまう。
「それは…その、法律上で決まっておりまして…」
「ほうりつ?」
「人の定めた法です」
「そのほうりつは、だれがきめているんだ?」
「国によって様々ですが、大概は国家に定められし人達ですね。国会議員などがそうです」
「それは、どうやったらなれるんだ?」
「バク様は、国会議員になりたいのですか?」
「…そうじゃない、けど…」
食い付くように見上げていたバクの勢いが弱まる。
しゅんと落ちる視線に、気弱に変わる声。
そこに愛情を向けるように、優しくウォンは問い掛けた。
「誰か、家族同士で好き合っている人がおられるのでしょうか」
「……うん」
「バク様はその人達を応援されたいのですね」
「…おうえん、かはわからない…でも、みたくないとおもったんだ…」
「(見たくない?)と言いますと…?」
「ミアのあんなかおは、はじめてみた。…もう、みたくない」
「ミア殿…で、御座いますか?」
「…ぁ」
誤って口に出してしまったことに、ウォンの反復で気付いたのだろう。
じわりと頬を赤く染めると、バクは慌てて頭を振った。
「ち、ちがう。ミアじゃないっ」
そんな否定をされれば、それが答えだと言っているようなものだ。
それでもバクの必死の主張に、ウォンは優しい顔で頷いた。
「成程。恐らくミア殿に似た人なのでしょうね」
「! そ、そうだっ」
「バク様は、その人に悲しんで欲しくないと」
「そうだ!」
「笑っている方が、女性は綺麗ですしね」
「わらってなくてもキレイだぞ!でも、わらっていたほうが、おれもうれしくなるから」
「左様で御座いますか」
ニコニコとバクの返答に笑顔を返しながら、ウォンは確信した。
ミアがバクに結婚の約束事をしようとして断られたことを、面白半分にフォーから聞かされたのは記憶に新しい。
バクがこんなにも必死になって尋ねているのは、他ならぬミアのことだ。