第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「かぱかぱ飲んでるけど、そんなスピードで飲んだら悪酔いするよ」
「煙草がねぇんだ、仕方ねぇだろ」
「どんだけヘビースモーカーなの…顔も若干赤いし」
「なんだ、俺の心配でもしてくれてんのかい?」
ニヤリと笑う次元に、雪は口を尖らせながらも否定をしなかった。
「だって…次元が酔ったら、私の味方がいなくなるでしょ」
そう言って向けた視線の先には、大泥棒とエクソシストの二人。
彼らは未だ、雪と次元の話に半信半疑なところがあるからだ。
「だからシラフでいて貰わなきゃ困るの。よってこれは没収っ」
「あっオイ!俺の酒!」
「今回の仕事が終わったらあげるから」
「何勝手なこと言ってんだ、返せ!」
「駄目!」
「おーい。何イチャついてんの?そこのお二人さん」
「仕事サボってんじゃねぇぞ」
ボトルの取り合いをする雪と次元に、呆れたルパンと神田の目が向く。
ワインを取り返し損ない舌打ちをするも、不意にぶるりと次元は身を震わせた。
「確かに飲み過ぎだな…小便」
「えっ」
「ちょいと用を足してくらァ」
ひらりと片手を振ってトイレへと向かう次元に、焦りを見せたのは雪だった。
「ま、待って次元っ一人で行くのは危ないよっ私も行く!」
「何言ってんだ、女と連れションする趣味なんざねぇぞ俺ァ。ルパン達と待ってろ」
「でも…」
味方がいなくなることに余程抵抗があるのか、渋る雪を次元が片手で追い払う。
「随分次元に懐いたなぁ、雪ちゃん」
「………」
「アレはいいのかい?」
そんな二人を物珍しげに見ながら問い掛けるルパンに、神田は眉間に皺を寄せはしたものの何も応えなかった。