第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「此処、昔住んでいた貴族の娘の霊が出るって噂があって。イノセンスと関係しているかどうか、確かめに来たの」
「成程な。それじゃオレらとは目的違いってことか」
「ルパンは…お宝狙い?」
「ご名答。ミケランジェロが残した、その貴族の娘を描いた絵を頂きに来たのさ」
「ふーん……それって泥棒でしょ」
「そうだけど?」
ジト目で返す雪に、臆した様子もなくさらりとルパンは笑う。
「雪だって別に警察じゃねぇだろ?」
「そうだけど…」
「じゃあお互いに無駄な干渉は無しってことで。持ちつ持たれつ行こうや」
「………」
「俺達の邪魔をしなけりゃ何したって関係ない」
「でもユウ…」
「お。珍しく気が合いそうだな、ユウちゃ」
「ファーストネームで呼ぶな斬るぞ」
「こわッ」
どことなく腑に落ちない表情を見せていた雪だったが、諦めるように小さな溜息をつくと、するりと二人の間から逃げるように席を立った。
「じゃあ私は早速一仕事してくるよ。ユウはシャワーでも浴びて濡れた体温めてて」
「別にこれくらい」
「ユウは平気でも見てる私が平気じゃない。支配人さんへ聞き込みついでにタオルも貰ってくるから」
「…じゃあ俺も行くかな」
「おりょ?なんで次元まで?」
「ワインだけじゃ口が寂しいもんでね」
指で煙草を手にする動作を示して、同じく腰を上げた次元が雪の後をゆっくりと追う。
「おいおい待てよ二人共。まさかこの刀持った殺人鬼と二人っきりにする気じゃあ…」
「ふざけんなよ、誰がこんな猿と同じ空間になんざ」
「持ちつ持たれつなんでしょ?」
「邪魔しないなら何したって関係ないだろうよ」
「「………」」
揚げ足を取られるとは、正にこのこと。
自分達の台詞を奪われ言い返せないルパンと神田を置いて、雪と次元は共に暗い廊下へと消えていった。
「…お前さんの彼女、中々言うな」
「…どっちがだ」