第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)
「お部屋はツインルームお一つで?」
「えー…っと…し、シングル二つ」
「吃んな。二人で一部屋だ」
「ちょっと待ってユウ。一応任務中だし、ここは別々に…」
「へえ。じゃあお前、途中でビビって避難しに来たりするなよ」
「え。」
「来んなよ」
「ち、ちょっと怪しいところがないか様子を」
「却下だ来るな」
「……ツイン一つでお願いします」
腕組みして仁王立ちする男の前で、先に白旗を上げたのは女だった。
「ビビリの癖に強がんなよ」
「別にそんなつもりは…」
「ツインルームならオレらの隣が空いてるぜ」
「「!」」
暗い廊下の先から声が割り込んでくる。
同時に顔を上げた男女は、アルドルフォ越しにひょろりとした人影を見つけた。
「よーぅ、お二人さん。こんな所で奇遇だな」
「ぁッ」
「………」
ひらひらと片手を振って笑顔を浮かべるルパンに、女は目を丸くし、男はぴくりと眉を潜めた。
雨の中でも見つけられた、彼女の真っ白なフード付きマント。
胸に刻まれた十字架のような模様を、記憶力の良いルパンはしかと憶えていた。
その隣を歩く男は一度変装させてもらった身、忘れるはずがない。
彼らとは一度パリで怪盗Gと国宝を巡り、同盟を組み敵ともなった。
ヴァチカンという巨大な後ろ楯を持った、黒の教団という謎多き組織。
其処に属するファインダーとエクソシスト。
「雪と刀使いの美形くん」
月城雪と神田ユウである。