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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第14章 Ⓡ◆路地裏イチャアンin神田【企画】



「知らない、よ。そんなの…大体、そうさせてるのはユウでしょ」

「知らないじゃねぇよ、自覚持て阿呆。他人が触れたら誰にでもそんな顔すんのかお前は。張っ倒すぞ」

「出た突然の暴力!なんでそこでそうなるの怖い!至近距離でガン付けないで怖い!」

「だから声がでけぇつってんだよ、本気でマリに気付かれるだろうが」

「じゃあユウが脅さなければいいだけで───痛ッ」

「あ?」



再び逃げ出そうとする体を壁に押しやれば、雪の顔が苦痛に歪む。
聞いたことはあるが、耐性のある雪の口からは滅多に聞かない確かな悲鳴だ。
以前は手当り次第に容赦なく手を上げていたが、恋仲の関係となってからは神田も多少は雪を異性扱いするようになった。
痛みを伴う程の拘束などしていないはずだと訝しげに神田が眉を寄せれば、目の前の体が強張る。



「…お前」

「………」



真正面から睨み付ければ、細い首が緊張気味に息を呑んだ。
みしりと、神田の眉間の皺が増える。



「脱げコラ」

「っ!?」



先程の艷やかな雰囲気は何処へやら。
顔を青くして逃れようとする体を押さえ込んだまま、神田の手はきっちりと襟首まで閉められた白いマントのジッパーを引き下ろした。
剥ぎ取るように半ば剥けば、見えたのは下に着込んだ黒服。
血の臭いが微かに強まる。

黒服を遠慮なしに捲れば、くびれた白い腹部に赤色はよく栄えた。
大きな獣の手にでも引っ掻かれたような跡が二本。
深い傷ではないが、じわりと赤い蚯蚓晴れの線を浮かばせている。



「…オイ」



神田の声が低さを増す。
ぴしぴしと肌に当たる鋭い気圧に、雪は堪らず血の気を引かせた。

雪の就くファインダーは教団の中で一、二位を争う程、怪我が絶えない職だ。
大なり小なり頻繁に怪我を負う雪に、神田が目を掛けるのは今では珍しくなくなった。
身を按じてくれるようになったのは嬉しいことだが、不器用な神田の施す手当てはそれはもう奮われる暴力と同じに遠慮がない。
消毒液を大量に傷口にぶっかけられるような治療法には、時には怪我した時以上の痛みが伴う。
それがどうにも雪は苦手だった。

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