第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
てっきり一人で向かうのかと思えば、南の手に腕を引かれる。
慌てるラビに振り返る南は、さも当然の顔。
を、してはいなかった。
「ごめんラビ、つき添ってくれる?私一人じゃ説得させられる自信ない」
申し訳なさそうに頼んでくる南の願いを、断れるはずがあろうか。
(できたらこんな悩み多き恋なんてしねーっつの)
溜息一つ。
引かれていた足を速めて、南の隣に並ぶ。
「しゃーねーな。でも無理だと思ったら諦めるかんな」
「うんっありがとう」
リーバーが仕事漬けになろうがなるまいが気にしないが、それで南を悲しませるのなら話は別だ。
例え相手が恋敵であろうとも、それで彼女の顔を暗くさせたくはない。
(オレも相当、馬鹿だよなぁ)
南への片想いを自覚した時から、彼女が誰を見ていたのかなんて知っていた。
自分が彼女に向けるものと同じ目を、リーバーへと人知れず向けているのもわかっていた。
それでも諦めきれずにいるのは、中途半端に吐露してしまった想いを、理不尽にぶつけてしまった心を、南が逃げずに受け止めたからだ。
ラビにとって都合の良い相手になるのではなく、きちんと答えを見つけるから待っていて欲しいと、真っ直ぐに向き合ってきたからだ。
だから自分も逃げずに向き合おうと思った。
南が答えを出せるまで、待とうと思った。
その答えが自分ではなくテントの中の人物に向けられることなど、わかっている未来だ。
実らない恋だとしても、ならばその答えが出る間までは、彼女の隣をこうして歩いていたい。
「…でも先に説得すんのは南な。オレより南の言うことの方が聞くはずだから」
「わかった」
人気から離れたテントを前にすれば、中から伝わる気配が一つ。
テントの入口は開放されている。
小さなランプを傍に、一人決算書と向き合うリーバーの姿が其処にはあった。
仕事時にだけ掛けている眼鏡に、愛用の羽ペン。
余程仕事モードに切り替わっているのだろう、二人が入口を覗いてもリーバーの顔が上がることはない。