第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「楽しみだねぇ、キャンプファイヤー」
「教団じゃまずしませんからね」
その為の準備だと思えば、重い木材運びも苦ではない。
にこにこと始終笑っている椛に、つられてアレンの頬も緩む。
しかし気掛かりが一つ。
「でも、コムイさんが変なもの用意してなければいいですけど」
「花火を上げる道具?リナちゃんの為だもん、変な機械なんて作らないよ」
「それはそうかもしれないけど…絶対とは言い切れませんし。今回のことも、元はと言えばコムイさんの作ったコムリンが原因だし…」
「大丈夫だよ。何かあっても、此処には皆いるからきっと止められる。心配ないよ」
どんなにアレンが不安要素を口にしようとも、椛の笑顔は変わらない。
その邪気のない笑顔を前にしていると、小さな不安などどうでもよくなってくる。
(これも椛の凄いところだなぁ)
椛が隣にいるだけで、どうしてこうも優しい気持ちになれるのか。
自然と皆の待つビーチへと進む足を弾ませながら、アレンは笑顔を向けた。
「椛っ早く行こう。皆待ってますよっ」
「あ、待ってアレンくん…っ」
今度はアレンが弾む声で呼べば、拙い足ながらも椛も笑顔で後を駆けてくる。
それはいつもの見知った光景だった。
「っあ、ッ」
しかしそこには、いつもとは違う声が響いた。
弾む愛らしい響きではない。
小さな悲鳴に近い声に、アレンの足も止まる。
思わず椛を凝視すれば、ぱちりと丸い瞳は揺らめいて逸らされた。
「椛?」
微かなものだったが、密接な関係にあるからわかること。
ビーチに背を向けて椛に声を掛ける。
「どうしたんですか」
「ううん、なんにも。ちょっと木の棘が腕に…」
「刺さった?見せて」
「う、ううんっ大したことないから!それよりこれ、ビーチに運ばなきゃ」
「薪集めならマリ達もしてくれてるから、心配ないです。それより…」
頭から爪先まで、椛の姿を様子見る。
おどおどと後退ろうとする足はぎこちなく、目敏くアレンはそこで視線を止めた。