第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「ひぃいッ」
「ひぃいじゃねぇよ。ほら、抓られたとこが戻んねぇじゃん。熱中症なりかけだァ、オメー」
「水と塩摂れ、水と塩ォ。ぶっ倒れて死んじまうぞ」
「ぶっ倒れて死ぬ前に小南に殺されちゃうだろ!?何て事すんだ、お前はぁあッ!!!」
「だはは、どっちみち死んじゃうて事か?」
そしてどうやら、相手は一人ではないらしい。
二人の男の会話。
「…死にゃしないわよ」
そこに新たに加わる、女性の声。
「知らない声だ…教団の人かな?」
「俺が知るかよ」
元より他人に興味を持たない神田は、黒の教団での在住が長い身であっても新人のチャオジーより団員の顔も名も憶えていない。
憶える気もないのだろう、素っ気なくあしらうと目の前のビーチを隠していた最後の葉を払い上げた。
見えたのは、先程のビーチと引きを取らないオーシャンビュー。
其処に幾人もの人影。
巨大なパラソルが砂浜に潰れるように落下しており、其処からゆらりと貞子のように這い出てくる女性が見える。
黒髪の頭にハイビスカスを差し込んだ、なんともセクシーなビキニ美女だ。
しかし見惚れる暇もなく、美女は銀髪の男を突き飛ばすとラビに似たオレンジ髪の男の襟首を引っ掴んだ。
「水と塩なら腐る程あるだろがこのボンクラージュうぅぅぅうーーー!!!!」
ぶぉんと大きく振り被ったかと思えば、細い腕のどこにそんな怪力が隠されていたのか。
妙ちきりんな叫び声を上げる男を、美女は意図も簡単に水平線へと投げ飛ばしたのだ。
「…おおぅ」
「…随分飛んだな…」
「…帰って来れる距離なのか、あれは」
「生きてりゃ帰って来るわよ。私にも焼きイカ」
「五百両になります」
「…何よ。お金とるの?」
「当たり前だ。俺が伊達や酔狂でイカなんか焼くとでも思っているのか」
「違うの?」
「…メンバーを理解してないのにも程があるんじゃないか?」
「理解?何で?」
「…必要ないか。俺もお前らがサッパリわからん」
「でしょうね。いいからイカ」
「理解など微塵も要らんが金は要る。五百両になります」
「ペインにつけといて」
「生きて帰るかどうかもわからんヤツに誰が掛け売りなんかするか」
「仲間でしょ?」
「…いや、正直全然そういう感じじゃないな…」