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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「おお〜!本当に青い!」

「綺麗だな〜、なんで光ってんだっけこれ?」

「太陽の反射だろ。あの水中に伸びてる穴を通して、洞窟が光ってんだ」

「これは石灰岩か?」



ラビに案内されて向かった科学班一同。
入り江から侵入した、半分海水に浸かった洞窟の中は、入口から鮮やかな紺碧の光を醸し出していた。
コンコンと洞窟内の壁を叩いたり、光の分析をするところは科学者ならではの反応らしい。



「どうですか、リーバー班長。来てよかったでしょ!」

「確かに、綺麗なもんだなぁ」



ジョニーに言われ頷くリーバーの顔にも、笑顔が浮かぶ。



「…こんな予定じゃなかったのに…」



その中で唯一どんよりと肩を落として凹んでいるのは、赤毛を垂れたラビだった。
わいわいと賑わう狭い洞窟の入口でただ一人、隅に寄りしくしくと嘆く。
目の前は大人数でごった返した観光場。
南と二人きりになる計画は、物の見事に崩されてしまった。



「はぁあ…」

「ラビ」

「なんでこうなるかな…」

「ラビ」

「空回って…バッカみて…」

「ラビってば」

「…へあ…?」



項垂れた赤毛が上がる。
何かとぼんやり顔を上げれば、それはすぐ傍にあった。



「何してんの?折角の青の洞窟だし、もっと楽しんだら」

「…南」



ちょんちょんと肩を指先でつついて来るのは、他科学班と同様に笑顔である南。
その笑顔も今はラビの心を晴らしはしない。



「すっごく綺麗だね、此処」

「あー…うん。そうさな」

「何その返事。つまんない?」

「そうじゃねぇけど……南はすっげぇ嬉しそうさね」



辺りを見渡す南の顔は心底嬉しそうな顔だ。
しげしげと見返せば、満面の笑みで南は頷いた。



「うん。だって、皆が楽しそうにしてるから」

「そりゃまぁそうだけど…」

「ああいう皆の姿見てるのって、私好きなんだよね。飲み会の時とかも」

「あのどんちゃん騒ぎが?」

「うん」



科学班の飲み会は、酒乱状態のどんちゃん騒ぎになるのが常だ。
酔った勢いで脱いだり一気飲みをしたり、傍から見れば確実に駄目な大人の部類。
そんな彼らを見ているのが好きだと南は言う。

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