第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「何?どうし──」
ゆっくりと泳ぎ近寄れば、背に隠していた椛の姿をアレンが晒す。
透明度の高い海で隠しきれないたわわな胸が、雪の目に映り込んだ。
「わあ…ゴチソウサマ」
「じゃなくて!助けて下さい、雪さん」
「何、水着取れちゃったの?さっきのスライダーとか?」
「うん…多分、重力に負けたんだと思うの…回転が凄かったから…」
「その胸の重さの所為じゃないの…えい」
「ひゃわ!?」
「ちょ…っ雪さん!?何羨ましいことを…!じゃなくて!」
「だって揉んで下さいとばかりに目の前の果実が訴えているもので」
大方の事態は察したが、目の前で主張してくる白い果実には一言物申したくもなる。
重力に耐えきれなかったのは、大きさ故ではなかろうか。
その証拠に、あれ程スライダーを堪能した雪の水着は1mmもずれていない。
その差はなんだ。
脂肪の量ではあるまいか。
たっぷりと手に余る胸の感触を実感していたが、ぷるぷると涙目で耐える椛にこれ以上はアレンが色んな意味で倒れるだろうと雪は手を止めた。
(やっぱり想像つかないなぁ)
椛と揃って初心な反応を見せるアレンが、夜は狼になることなどあるのだろうか。
そんな場違いなことを思いつつも、どうしたものかと考えあぐねる。
「兎に角、僕が教団に戻って代えの服を取って来ますから。それまで雪さんには悪いんですが、椛の傍についていてくれませんか?」
「それは構わないけど…でもいくら海の中でもこんな炎天下の中で待たされたら、椛が脱水するよ」
体を冷やしているという油断からか、海水浴でこそ脱水症状に見舞われる者は多いのだ。
アレンの意見に首を横に振ると、雪はじっと自身を見下ろした。
「雪ちゃん?」
「……これ着て椛。その場凌ぎにはなるだろうから」
やがて意を決するようにボタンに手を掛けると、着込んでいたシャツを脱ぐ。
絞るようにシャツの両先端を捻り、着せた椛の胸の前で固く結べば、谷間は強調されるが際どい所は隠すことができた。