第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「納得いかない」
「なんさ?まだ言ってんのアレン」
「僕と椛だけだと思ってたのに」
「アレンって椛関係だとホント心狭くなんのな…」
むすりと顔を歪めるアレンを覗き混んだラビが、呆れ顔で肩を竦める。
二人の白と赤の髪を照らす日差しは、ジリジリと身を焦がす程に強い。
「いーさ?海の提案をしたのはオレ。乗っかったのはコムイ。今此処で娯楽を堪能できてんのは、オレのお陰と言っても過言で」
「移動手段は方舟です。椛のこといやらしい目で見たら残りの片目潰しますからね」
「…おっまえ、ホント椛関連だと容赦ないのな…(AKUMAより悪魔さ…)」
熱い日差しが肌を照り付ける。
ジリジリと焼け付く暑さに、アレンの眉間の皺を伝う汗が音もなく地に落ちた。
即座に蒸発していく地は真っ白で柔らかなきめ細かい砂地。
ざざん、と心地良い波の音が耳を奏でる。
アレンの銀灰色の目の前に広がるは、アクアブルーの澄み切った水面。
後方には密林とも呼べる青々と生い茂ったジャングル。
此処は黒の教団ではない、遥か離れた南に位置する人口の存在しない孤島。
所謂南国の島と呼ばれる場所だった。
「熱い太陽!青い海!白い砂浜!うーん、最高の夏休みだね!」
いつもの眼鏡をサングラスに変え、いつもの白い室長服をド派手なアロハシャツに変えたコムイが、沢山のフルーツが盛り付けられたカクテルグラスを片手にパラソルの下で楽しげに唸る。
コムイが定休日を言い渡したのは、何も科学班だけではなかった。
教団の団員全員が休みを言い渡された本日、ただ暑い教団内で過ごすだけならば、と方舟で道を繋げたのは南の無人島。
ただの定休日が、忽ちに南の島での娯楽日和となったのだ。
「きーもちぃー!海なんて何年ぶりだよオイ!」
「こんな休日過ごせるってんならコムリン様々だなぁ」
「バカ、そりゃ流石に不謹慎だって。言うなら神田様々だろ」
「発電機壊してくれたもんなぁ」
「そうそう。最初は死ぬかと思ったけどな」
「ああ、本気でな」
「言えてる!」
わははは!と豪快に笑いながら笑えない話をしている団員達も、今やすっかり娯楽モード。
人目を気にしないで良い場所だけに、海パン姿ですっかり子供のように遊び倒していた。