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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第13章 ※◇◆Summer to spend with you.



「アレンくんっアレンくんっ!」

「…椛?」



茹だるような暑さを残す教団内部。
少しでも涼める場所に避難を、と暗い非常階段の隅に座り込んでいたアレンは、ぱたぱたと元気に駆け寄ってくる椛の姿を見つけぼんやりと顔を上げた。
足元に転がっている水分補給用の大きなヤカンは空っぽで、水滴一つさえ残していない。

茹だるような暑さの中。
相棒であるティムキャンピーをお供に笑顔で駆け寄ってくる彼女の姿は、目を細めてしまう程に眩しい。



(なんだろう、あれ…天使かな)



真夏の日差しが廊下の窓から差し込み、椛の走る道を導のように照らす様は地上の者ではないような錯覚に陥らせる。
暑さで参っているのもあるだろうが、大半は自分の本心だと素直に認めながら、アレンはゆっくりと腰を上げた。

想い人は、今日も文句無しに愛くるしい。



「どうしたんですか?今は仕事中じゃ…」

「それがねっハァ…仕事、休みになったのっ」

「休み?まさか具合でも悪くなったとか…っ」

「ううん、違う、の」



少しばかり息切れした呼吸を整えながら、尚も弾む声を続ける椛の顔は始終笑顔だ。



「コムイ室長が、今日は皆定休日にするって」

「え?」

「だからね、アレンくんと一緒に過ごそうと思って…これ、」



はい、と目の前に差し出されたのは専用のハンガーに掛けられた二つの布類。
普段見ることなどないが、確かに知っている構造の瑞々しい生地に、アレンは目を丸くした。



「白と黒、アレンくんはどっちが好き?」

「……へ?」



どこをどう見ても見間違えるはずはない。
女性の胸元と下半身の大事な所しか隠さない、所謂夏の必須アイテム───スイムウェア。



「これって…ぁ、あの…」

「うん。どうせなら、暑くても楽しめることしようって」



ぷるぷると震える指で指し示すアレンの手を握り締めて、椛は弾む顔で笑った。



「アレンくん。海に行こう!」




















「………」

「…アレンくん?もしかしてどっちの水着も好みじゃない?」

「っいえ!どちらも大好きです!」

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