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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



 ティエドールにとって、自分の部隊に所属している神田もマリも、大切な弟子であり我が子同然のもの。
 特に神田は10歳というほんの幼い頃に、自分の部隊に所属させたエクソシスト。
 その長い間、傍で師として彼らのことをつぶさに観察し続けてきた。
 故にティエドールなりに彼らのことは、よく知り得ている。


 まず、神田ユウ。

 彼程、己の感情に素直な人物はいないだろうとティエドールは思っていた。

 その根本は怒り。
 気に入らないことや気分を損ねることがあれば、彼は問答無用で怒鳴り散らし手を上げる。
 心身が弱っている時でさえ、気遣い触れようものなら近付くなと威嚇され好意でさえも跳ね除ける。

 それ以外の感情は、基本"無"だ。
 喜びの感情でさえ、彼は素直に表しはしない。
 そんな神田の感情の9割は、怒りで出来ていると言っても過言ではないだろう。

 しかしそれは不器用な彼なりの感情表現の一つなのだ。

 "セカンドエクソシスト"という器として、人工的に形造られた存在。
 生まれた理由が理由なために、周りに敵意を持つことでしかエクソシストの道を歩めなかった。
 そんな彼が怒りであっても誰かに関心を示し、言葉を交え、関係を持っている。
 そのことがティエドールには嬉しくて堪らなかった。
 だからこそついつい怒りを向けられても構い過ぎて、結果憤怒の爆発を彼に起こさせてしまうのが常なのだが。

 正より負の感情が勝る彼だが、それでも捨てずに人の心を持っている。
 だからこそ彼は少しばかり人より"怒り"が多いだけの、素直な人間だとティエドールは思っていた。

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