第6章 Merry christmasの前にⅠ【アレン】
「生まれてきてくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう。…私を好きになってくれて、ありがとう」
「……」
「私にとってはイエス様より大切なの。アレンくんが生まれてきてくれたこと」
ちょっと大袈裟かもしれないけど、全部本音だから。
照れ臭くなって最後は笑って誤魔化せば、私を映す薄い銀灰色の目が丸くなる。
それから少しして、くしゃりと。表情を崩してアレンくんは笑った。
あ、それ。
私の好きな顔。
「…ありがと」
丁寧な敬語じゃなく、ぽつりと零れた素直な言葉。
そのまま背中に回される二つの腕が、呆気なく私の体を閉じ込めた。
イギリス人特有の白い腕と、イノセンス特有の赤黒い腕。
どちらも正反対な外見をしてるけど、どちらも同じに私に触れる時はとても優しいアレンくんの腕。
だけど今日は少しだけ違った。
「…アレンくん?」
少しだけきつく抱き締められる。
「ありがとう、椛。…今までで一番嬉しいクリスマスです」
「………ジェリーさんのクリスマス特別メニュー、まだ食べてないのに?」
「うん」
「……誕生日プレゼントもまだあげてないのに?」
「うん」
まだおめでとうしか言ってないのに…大袈裟だなぁ、なんて思ったけど。
本当に嬉しそうに何度もアレンくんが頷くから、なんだか私も嬉しくなって。
初めて出会った頃より広くなった背中に手を回して、私もそれに応えることにした。
「私も。今までで一番嬉しいクリスマスだよ」
「…椛も?」
「うん。だって、」
他の誰でもない、私が一番に"おめでとう"を伝えられた日だから。
*Merry christmasの前に*
(貴方に愛の祝福を)