第6章 Merry christmasの前にⅠ【アレン】
柔らかなシーツと布団の隙間で、壁に背を向けて眠る。
そんな私の背後から、緩く拘束してくるのは二つの腕。
束縛さえも心地良い、私だけの為にある温かい空間。
出会った当初は細かった腕も、教団に入団してから毎日トレーニング漬けをしていたからか、すっかり逞しくなった。
けれど昔から、私に触れてくる腕は変わらず優しい。
ぴた、と頬に小さな小さな手が当たる。
ぴた、ぴた、と。一度、二度。
その小さなサインがくすぐったくて、ついクスリと笑みが漏れた。
くすくすと笑えば起きていることに気付いたのか、小さな手がサインをやめる。
そっと目を開ける。真っ暗な室内。
でも暗闇に慣れた目は、見慣れたまぁるいボディを映し出していた。
「ありがと、ティム」
小さな声でひそひそと御礼を言えば、にぃっとギザギザの歯を剥き出しにして笑う。
それはクロス元帥が造り上げた、他より特殊なゴーレム、ティムキャンピー。
ぴたぴたと頬を叩いていたのは、人形のように小さなティムの手だった。
私がこの時間帯に起こしてくれるよう、ティムに頼んでいたから。
忠実に約束を守ってくれたティムに手を伸ばして、まぁるいボディを撫でれば、するりと長い尾がじゃれるように擦り寄った。
よしよしと撫でる手にも熱が入る。
小動物のようなふわふわの毛もつぶらな瞳もないけど、ティムって本当に可愛いなぁって思う。
一頻りティムを愛でた後、なるべく体を動かさないように、んん、と手を伸ばしてベッドの横にある棚に置かれた目覚まし時計を取った。
時間を確認すれば、彼が起きるいつもの時間の少し手前。
よかった、先に起きることができて。
ほっとしつつカチリと目覚まし時計をOFFにする。
偶にはけたたましいベルの音じゃなく、私の声で起こしてあげたい。
昨日は夜遅くまで任務が長引いていて、疲れて帰って来てたし…今日という日であれば、尚更。