第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「な、何ラビ…! そんな急に走れないからっ…わぁっ!?」
からんころん、と慌ててもたつきながら下駄を鳴らす。
そんな南を待ってる余裕なんてなくて、大急ぎで腰を抱くとそのまま担ぐように抱き上げた。
雑で悪いさ、でもこっちの方が速く走れるんで!
「なな何ほんと…! どうしたのっ!?」
「オレ西洋のお化けも駄目だけど、こっちのお化けも駄目なんだって…!」
「はっ!? お稲荷様はお化けじゃなくて神様だけど…!」
そっちじゃねぇから!
あっちだから!
だってあの時、名前をはっきり聞かれた。
もしあそこで教えていたら──…どうなっていたのか。
そんな想像するのも恐ろしい。
折角の誕生日だってのに、なんだってこんな薄ら寒い思いしなきゃなんねぇのか。
「ラビってば…! 落ち着いて…ッ」
オレの肩にしがみ付きながら上がる南の声に、まともに応える余裕もなく。
一刻も早くこの場から逃げ出すのが先だと、南を抱く腕に力を込めてひたすらに駆けた。
南の国を堪能できるのは嬉しいんだけど。
でもあっち系まで堪能したいとか思ってないからいやマジで。
「って方舟ゲートまだ開いてないんさ!?」
「アレンとの約束の時間までもう少しあるから──」
「早く! マジで早くお願いします!」
「なんでそんな青い顔してんの。なんでそんな震えてんの怖いから! 嫌な予感しかしないからそういう反応やめて!」
最初に方舟で降り立った場所で、ぎゃあぎゃあ南と騒ぎ立てる。
だって仕方ないだろ怖ぇんだから!
結局アレンの方舟が繋がるまで、生きた心地なんてしなかった。
*Happy Birthday Lavi!*
(ナムアミダブツ、ナムアミダブツ!)
(念仏とかやめてほんと怖いから!)