第64章 嵐の夜に
斗真「夢みたいだ」
「ん?」
斗真「一生無いと思ってた。こんな事」
「………俺も」
そう告げた後、会話が止まる。
斗真は何度も髪や首筋にキスをしながら。
俺は黙って窓を見つめたまま。
斗真「潤と…どうするの?」
暫くの沈黙の後、斗真が呟く。
斗真「この事…話すの?」
「まだ分からない。でもきっと…話さないといけない」
斗真「そうだね…」
「斗真ごめん。巻き込むかもしれない」
斗真「構わないよ。ボコボコに殴られたっていい。一度きりでもこんな美味しい役回りが出来たんだから」
「ぷっ…」
斗真「ふふっ」
一度斗真の腕の中から離れると、寝返りを打ち正面から斗真を見つめた。
「ありがと。斗真」
笑いながら優しく首を横に振ってくれた。
斗真「翔くん。お願いがあるんだけど」
「………どうしたの?」
斗真「今日は…仕事?」
「夜に少しだけ」
斗真「許される時間まで…ここに居て?居てくれるだけでいいんだ。もう少し…余韻に浸りたい」
「………いいよ。いる」
斗真「ありがとう」
「ご飯でも作ろうか」
斗真「マジで?いいの?」
「簡単な物しか出来ないけど」
斗真「翔くんの作ったものなら何でもいい」
「そっか。分かった」
微笑み合った後、近付いて来る斗真の顔。
唇を重ねながら…俺は斗真の首に手を回した。