第64章 嵐の夜に
ー翔sideー
寝室に明かりが差し込んで来たのに気付き、漸く朝を迎えたんだと気付いた。
耳元に掛かる斗真の寝息。
後ろから俺の胸元に手を回して眠る斗真の腕に自分の腕を重ね、カーテンの隙間から見える空を何時間も見つめてた。
ぼんやりと眠れずにいたら朝が来てしまった。
斗真と寝た。
生まれて初めて、潤以外の人と…身体を重ねた。
寄り添って朝を迎えた。
もう、潤とは終わった。
勢いで終わりにしてしまった。
けれど…斗真が居なかったら俺は今頃どうしてたか分からない。
斗真の傍に居たかった。
斗真に縋りたかった。
斗真に抱かれるまで崩壊しそうだった心。
今は…驚く位穏やかだった。
別れる事を決めたとはいえ、俺は既婚者で。
崩壊しそうな位、潤を愛していて。
キスした時はあんなに後悔して泣いたのに。
俺の心は穏やかだった。
波風ひとつ立たない海の上を…小さな小舟で漂ってる気分だった。
斗真「う、ん…」
目が覚めたのか、後ろで斗真がモゾモゾ動いた。
黙ってると、斗真が俺の肩にキスをして、密着してくる。
「おはよ」
寝起きの掠れた声が聞こえた。
「おはよ…」
肩から背中に優しく触れる様なキス。
振り返ると…唇にも優しく降りてきた。