第10章 誕生
太陽「おぎゃぁ…おぎゃぁ…」
子供の泣き声にうっすらと覚醒する。
「ん…」
寝返りを打ち、隣を見ると暗がりの中、俺に背を向けて太陽をあやす翔の姿があった。
翔「よしよし…オムツ変えようね太陽」
静かにその光景を眺める。
子供を優しくあやす翔の姿は正に母親だ。
本当に…親になったんだな、と独りで感激していた。
翔「あ、ごめん。起こしちゃった?」
俺が起きてるのに気付き、翔がこちらを見つめる。
「いや…大丈夫。次俺やろうか」
翔「いいよ。疲れてるだろ?明日も朝から仕事なんだから寝て?」
「翔だって疲れてるだろ?退院してもずっと独りで太陽の事見てるし…」
翔「世界中の母親はそれやってるでしょ?俺だけ甘える訳にはいかないよ。ただでさえ…俺が仕事復帰したら実家に頼らなきゃいけないんだから。出来る時には自分でやりたい」
「翔…」
翔「たった1人で頼ってたら2人目3人目出来たら何も出来ないよ。だから頑張る」
「せめてさ…暫く実家に居た方が…」
翔「………」
「翔もゆっくり出来たと思うんだよ」
翔「………馬鹿…」
「え?」
翔「もういい。知らない」
太陽のオムツの変え終わった翔が、俺に背を向け太陽をベビーベッドに寝かせた。
………怒ってる?
「翔…怒ってる?」
翔「………」
寝付きの良い太陽は、直ぐに眠りに付いた。
翔「………俺は…ちょっとでも潤と2人きりになたいから実家には戻りたくないのに……馬鹿」
「………翔…」
………可愛い…。
今時頬膨らまして拗ねるなんて…マジで可愛い…。
翔「それに…明日から『花男』の番宣が始まるでしょ。て事はさ…その…」
「………真央?」
翔「………だから一緒に居たいんだよ」
「翔…」
翔「分かってる。彼女とは友達だって。でも…やっぱり不安なんだよ。彼女は素敵な人なんだ。潤が好きになるのも…見てて分かる。俺も彼女の事好きだよ。可愛くて優しくて…。恋人奪った奴に優しく出来るなんて…俺なら絶対出来ない事を彼女はやってるんだ。本当に…いい女だって思う。だから怖いんだよ…潤と彼女が一緒に居るの。だから…俺も潤の側に…」
翔が言い終わらない内に俺は翔を引き寄せ抱き締めた。