第64章 嵐の夜に
打ち合わせの間も…彼女の言葉が頭から離れなかった。
『奪われる側の気持ち、分かったでしょ?』
何度も頭でリピートする。
悔しくて、言い返せなかった。
何度も打ち消す様にして、打ち合わせに集中する。
ディレクター「それでは…これで決まりという事で。宜しくお願いします」
「はい。分かりました」
ディレクター「すみません酷い天気の中。お気を付けて帰られて下さいね」
「ありがとうございます」
資料を鞄に詰め、頭を下げて打ち合わせ室を出て行こうとする。
「え…」
廊下の先、俺と目が合うと向かって来る彼女の姿。
翔マネ「櫻井さん」
「………ごめん大丈夫。今日は先に帰っていいよ」
翔マネ「いやでも」
「大丈夫だから」
向かって来る彼女を見つめながらマネージャーに伝えた。
「2人で話したい。潤には俺から話すから言わないで」
翔マネ「………分かりました」
マネージャーはそのまま歩いて行く。
真央「お疲れ様です」
目の前に立つと、彼女はそう言った。
「お疲れ様です。待ってたんですか?」
真央「たまたまですよ。帰ろうとしてたら貴方も帰られたのでさっきの続きでもって思って」
「………どうぞ」
打ち合わせ室の扉を開けて促すと、彼女はニコリと笑って中に入って行った。