第63章 修復
「もしもし」
『………お前…』
何度目かの『もしもし』で漸く返事が返ってくる。
「………潤」
潤『何で翔の携帯にお前が出るんだ』
「………」
潤『答えろよ。斗真』
潤の怒りに満ちた顔が目に浮かんだ。
「それに答える義務はない」
潤『ふざけるな!』
「………翔くんなら寝てるよ。隣で」
潤『何…?どういう事だよ』
「そのままの意味だよ」
潤『斗真…』
「言ったよな。翔くんを傷付けたら許さないって」
潤『………』
「翔くんは貰う」
潤『翔は渡さない。俺の妻だ』
「裏切った癖に何言ってんだ」
潤『頼むから…返してくれ』
泣きそうな潤の声が聞こえる。
けれどそれも今の俺には怒りの対象でしかない。
「………選ぶのは翔くんだ。俺は翔くんが求めてくれたら喜んで受け入れる。例えお前の代わりでも」
潤『斗真…!』
「翔くんを愛してる」
潤『斗真!翔に代わってくれ!』
「だから寝てるって言ってるだろ。誰かのせいで泣き疲れて寝てるんだ。起こすつもりはない」
潤『………』
「もう切るぞ。起こすといけないからもう掛けて来ないでくれ。家にも来られると困るから」
潤『と…』
潤の言葉を待たずに通話を切った。
「悪いな潤」
スマホをソファーに投げ捨て俺は翔くんの眠る寝室へと向かった。