第63章 修復
ー斗真sideー
ベッドに腰掛け、静かな寝息を立てる翔くんの髪に触れた。
「愛してる…」
そう呟いてキスをした。
泊まってくれてよかった。
今日はどうしても、手放したくなかったから。
布団を掛けた後、起こさない様に寝室を出た。
「ふぅ…」
リビングに戻り、ソファーに腰掛けると大きく溜息を付いた。
潤と別れるまで待つつもりだった。
それでも…翔くんを目の前にすると我慢出来なかった。
20年溜め込んでいた俺の気持ちがもう止まらない。
潤から奪いたくなった。
無理矢理にでも。
翔くんの甘い声を思い出す。
そして口に含んだ甘い味。
甘くて堪らない。
あのまま骨の髄までしゃぶり尽くしたかった。
翔くんが泣いても。
留まったのは…残っていたほんの少しの理性。
でももう…次はないだろう。
きっと次は…止まれない。
「はぁ…」
頭をぐしゃぐしゃと搔いてると…スマホが音を立てる。
この着信音は…俺のでは無かった。
床に落ちていた翔くんのスマホを取り上げると…潤からだった。
『潤』の文字を見た瞬間、俺の腹にどす黒い気持ちが沸き起こる。
そのまま俺は通話をタップする。
「もしもし」
電話の向こうから…息を飲む声が聞こえた。