第62章 Distance
「斗真…もういいから」
立ち上がり、斗真の腕を掴む。
斗真「翔くん…」
「ありがとう…」
斗真「でも…」
「大丈夫。大丈夫だから…俺は…もう平気…」
潤「翔…俺…本当に…もう真央とは…」
「お願いだからもうその名前出さないで!!」
彼女の名前に…思わず声を出してしまった。
潤「翔…」
「俺は平気だから…お願い…出てって…」
潤「でも…」
「お願いだから…出てって…」
背中を向けると潤は黙って出て行った。
部屋には俺と斗真だけが残される。
斗真「翔くん。とにかく横になって」
斗真に促され、ソファーに横になる。
「斗真…俺もう平気だから」
斗真「心配なんだよ。傍に居させて。1人になりたいなら…別だけど」
斗真が俺の手をしっかりと握ってきた。
「………ありがとう」
斗真「何もしてないよ。とにかく…少しでも寝て?」
「うん…」
ゆっくりと目を閉じると静寂に包まれる。
でも…しっかりと繋がれた斗真の手は温かかった。
熱のせいか、疲れのせいか。
直ぐに訪れる睡魔。
斗真の手がおでこに触れる。
気持ちよかった。
斗真の優しさに甘え、俺はそのまま意識を手放していった。