第62章 Distance
チーフ「は?翔が?それで…」
翔…?
顔を上げるとチーフが俺を見つめながら電話で話す。
チーフ「許さないって言っておいて。は?もう…!出来るだけ説得しなさい。今潤と話してるとこよ。また連絡するわ。翔の事頼むわね」
通話を終えるとスマホをテーブルに置いた。
「あの…翔は何て…」
チーフ「貴方と別れるって。帰国したら…実家に戻るって言ってるみたい」
「は…?」
チーフ「まぁそうなるわよね。浮気した癖に別れたくないなんて言ってる馬鹿とは一緒に居たくないわよね」
「チーフ…!」
チーフ「あの子は昔から頑固だからね。言った事曲げた事無かった。クソが付く程真面目で真っ直ぐで…努力家。貴方が1番分かってるでしょ」
「………はい」
チーフ「私も話すけど、家庭の事は貴方がどうにかしなさい。離婚を思い留まらせる事が出来るのは貴方だけなんだから。分かったわね」
「はい」
チーフ「話は終わりよ。戻っていいわ」
「………失礼します」
立ち上がり、頭を下げて出て行く。
マネージャーの車に乗り、スマホを取り出す。
翔に電話を掛けても出る事は無かった。
『俺は別れたくない』
メッセージを送り、スマホをポケットに入れた。
翔に逢いたい。
逢って抱き締めたい。
俺の人生には翔が必要なんだ。
愛してる。
俺の思いを伝えよう。
遠い異国の地に居る翔が早く帰って来る事を願うしかなかった。