第62章 Distance
リビングのソファーに座り、翔を待った。
長い長い時間に感じた。
やがて玄関の扉が開き、翔が戻って来た。
リビングの入口で少し佇んだ後、俺の隣に座った。
「………」
翔「………話し合うんじゃないの」
「………まだ…俺の事許せる気にはなれない?」
翔が黙ってうつ向く。
言葉を選んでいるかの様に。
そしてゆっくりと顔を上げると…俺を見つめた。
翔「………太陽の事思うと…許さないといけないんだって思う。このままじゃいけないって思う。許そうと…考えた。でも…」
「………でも…?」
翔「潤を見ると…頭に浮かぶんだ。彼女を抱き締めてるとこ。彼女にキスしてるとこ。彼女と………セックスしてるとこ…想像するんだ」
「翔…」
翔「今こうして見つめ合って話してても…頭に浮かべながら話してるんだよ俺。潤と彼女がセックスしてる場面。これってさ…何の拷問?いつまで続くのかな?」
「翔…」
思わず翔の手を握った。
「あれは…過ちだった。もう二度と無い。誓って言える。こんな事もうしない。だから…頼む。許してくれ…」
翔「………潤…」
「お願いだから…お願いします。翔を失いたくない。頼む…許して…」
深く何度も頭を下げた。
翔は…そんな俺をどこか虚ろな瞳で見つめていた。
「………どうしたら…許される?どうしたら…」
翔「………消して」
「………翔…」
翔「俺の頭から…消して。消してよお願い…もう嫌だ…」
翔の瞳から…溢れる涙。
ボロボロと大粒の涙が頬を濡らした。
翔「消して…お願い消して…!」
「翔…!」
翔が俺に覆い被さる様に抱き着いてきた。