第60章 Prelude to collapse
腕の中で意識を飛ばす翔を抱き締めながらゆっくりと寝室に入る。
太陽の隣に横たえ、パジャマに着替えさせると翔の目がゆっくりと開いた。
翔「潤…?」
「起きた?」
翔「ごめん…俺寝ちゃった…」
「いいんだよ。着替えて来るから待ってて」
ちゅっとキスをした後、俺は寝室を後にした。
タクシーに乗ってからは無我夢中だった。
家に買えると…俺の目に飛び込んで来たのはソファーの上で寄り添う翔と斗真の姿。
一気に頭に血が上った。
斗真「翔くんにキスした」
斗真を殴って家から追い出した。
泣きながら俺に謝る翔。
素直に話してくれた翔が愛しくて…怒りは感じる事が出来なかった。
俺の方が最低な事した…。
でもずっと黙ったまま。
一瞬、真央との事を話そうかと思ったけれどそれでも出来なくて。
翔を抱き締め愛し合った。
久し振りの愛の営みは幸せで…起こった事全てが吹っ飛びそうで。
きっと今の俺を鏡で見たら…変な顔なんだろう。
翔と俺の服を片付け、部屋を出ようとするとテーブルに置いていたスマホが音を立てた。
明日折り返せばいいか…そう思いながら画面を見ると…『真央』の文字が目に入る。
反射的に俺はスマホを掴んでいた。
「真央?」
真央『もしもし潤くん?』
いつもの真央の声。
変わらない声の筈なのに…どうしてだろう。
背筋がひんやりとした。
真央『こんな時間にごめんね』
「いや…何かあった?」
真央『私…考えたんだけど』
「何?」
真央『………また逢ってくれる?潤くん』
グラグラと…視界が揺らめいた。